シークレット ハニー~101号室の恋事情~


「俺は、流されて抱いたわけでも、据え膳で抱いたわけでもないから。
葉月だから部屋に誘ったんだし、他の子だったら部屋に入れたりしないし、もちろん触れたりもしなかった」
「私だからって……だって接点なんて同じマンションって事くらいで、話した事もないじゃない」
「軽い挨拶程度しか話した事はないけど、俺はずっと見てきたから。
葉月の事を」


葉月だから、葉月の事を。

そんな風に特別な言葉をもらってときめかないわけじゃないけど。
それ以上に、なんで私?って疑問が頭から離れようとしなくて、素直にドキドキしていられない。

だって、本当に挨拶を交わした事くらいしかないのに、なんで?

今は引退していても、芸能界なんて華々しい世界に身を置いていた五十嵐さんが、なんで“葉月だから”なんて言うのかが分からない。


「あの、私はただのOLで、実家も資産家じゃないし、私自身も至って普通で特にこれといった特技も自慢もないんですけど」


顔をしかめた五十嵐さんに、何が言いたいの?って聞かれて続ける。


「だって、五十嵐さんの周りには、綺麗な方とかたくさんいたでしょう?」




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