シークレット ハニー~101号室の恋事情~



「では、カードは約一週間後に書留で郵送になりますので。
ありがとうございました」


最後のお客様が自動ドアを出てから、男性職員がシャッターを閉める。
ガシャンって音を立てて外の空間と遮断されると、ほっとため息がもれた。


「はは、ため息。今日、新規多かったもんね。春だからかな」


隣の窓口に座る福島さんに話しかけられる。
しまった。まさか見られてるとは思わなかった。


「バイト始めたりする人が多いんですかね。給振の口座が必要になりますもんね。
今日は八件新規受けたけど、みんな給振口座でしたし。
でも、新規抜かしても今日忙しかったです」
「月曜日だしねー」


福島さんは、私よりも四つ上の先輩。
預金の仕事も窓口の仕事も、教えてくれたのはコーチャーの福島さんだ。
支店内の女子社員の中ではかなりのベテランで仕事も早い。

そんな福島さんにみっちりコーチしてもらったおかげで、入社して二年経つ前には一人前って言ってもらえるレベルになれた。


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