シークレット ハニー~101号室の恋事情~
高校時代、彼はとにかく自由な人で、なんでも真面目にとらえてカチカチなルール通りにしか動けない私は、その自由さに憧れていたハズなのに。
社会人になると、その自由さはどんな角度から見ても魅力には思えない。
なるべくサラっとかわそうと思っていたのに、会話しだして数分で半分怒鳴っているような返事になっていた。
それはマンションが近づくにつれてヒートアップしていき、マンションの前まで来た時には、意識して使っていた敬語も忘れるほど。
「だから! 私は話す事なんかないって何度言えば分かるの?!
これ以上粘るなら、警察に通報するから!」
「そんな怒るなって。知らない仲でもないんだし、ちょっと話すくらいいいだろ?」
「居酒屋からここまで20分間、ずっと話してきたでしょ!
いいから帰って!」
「でも、俺、この辺の道よく分からないし。ほら、配属されたばっかじゃん」
「じゃあタクシーでも呼んで帰って。
大通り出ればつかまるから」
「つーか、そこまで部屋に上げるのを嫌がるって、さてはゴミ屋敷?
それか同棲中とか?」
「……あと、10秒以内に帰らないと本当に通報するから」