シークレット ハニー~101号室の恋事情~
「でも、さっき一度言われただけですから、少し様子見ます。
それより、話ってなんだったんですか?」
福島さんは納得いかなそうに眉をしかめたけれど、その後、本題を思い出したのかしかめっ面を消してくれて、それにホっとする。
「なんかまだ確定ではないらしいんだけど、監査課課長が代わるんだって」
「あ、そうなんですか……。
ところで今の課長ってどういう人でしたっけ」
「私も知らないけど、新しい課長はどっかからヘッドハンティングしたとかで」
「ベッドハンティング……現実にもあるんですね。漫画とかドラマの世界だけかと思ってました」
驚きながら言うと、福島さんが「でしょ?」と嬉しそうに続ける。
福島さんは芸能界だけじゃなくて、社内のそういう話も大好きだから、なんだか意気揚々として見えた。
「正直、監査課って年に一度しか関わりないから顔も名前も憶えてないけど、ヘッドハンティングって響きはカッコいいよねー」
「でも、監査課って言ったら他の課とはちょっと重さが違いますよね」
「ねー。内部の監査だから、監査課だけ見てる方向違うからね。
でも、どんな人なのか一回見てみたいよね。まぁ、監査来ても監査中は部屋こもりっきりであんまり見る機会もなさそうだけど」