シークレット ハニー~101号室の恋事情~
カウンターに置いてあるパンフレットをそろえながら、福島さんが残念そうにため息をつく。
それから、「あ」と何かを思い出したように呟いて私に耳打ちした。
「そういえばね、五十嵐さんの事でひとつ思い出したんだけど、一度妹さんと近親相姦だとかで記事出てたのよ。
一緒に部屋に入って行ったとかでね」
「え、でも、そんなの普通じゃないですか? 家族なんだし」
「それが、両親の再婚でできた義理の妹なんだって。
だからマスコミが面白がって記事にしたみたいだけど、随分下世話な内容だったから覚えてたの。
本当、大変な世界よね」
「そうですね……」
私は社内でひそひそされるだけだけど、芸能人って職業になるだけで、噂も全国ネットで広められちゃうのか。
過酷な世界だな。
更衣室のひそひそ話と冷戦するのが精いっぱいの私には到底耐えられそうもない。
五十嵐さんはそんな世界で戦ってきたのか……。
あんな柔らかい雰囲気と優しい微笑みで、一体どうやって生き抜いてきたんだろう。
五十嵐さんの笑顔を思い出すと、なんだか胸が痛かった。