シークレット ハニー~101号室の恋事情~
珍しく18時に上がれて、信号もスムーズで野田にもつけられる事なくマンションに無事着いたのだけれど。
102号室の前に立つ五十嵐さんに阻まれて、部屋に入れずにいた。
ポストから廊下に入ったところで五十嵐さんの存在には気づいたのだけど、手に紙袋を持っていたから買い物帰りに通りかかっただけかと思って、隠れる事にした。
けど、数分立っても五十嵐さんは私の部屋の前から動く気配はなくて。
元芸能人があんなところに立ってたりしたら、見つかった時色々大変なくせに何やってるのもう。
そんな風にしびれを切らして、というか、諦めて出ていくと、私に気づいた……正確には気づいたふりをした五十嵐さんが微笑む。
「かくれんぼは終わり?」
「……気づいてたなら黙っていないで声かければいいじゃないですか。
趣味悪いです」
「葉月の事だから、俺がいつまでもここに立ってると色々大変なんじゃないかって心配して出てきてくれると思って待ってたんだ」
「で、何か用ですか。私、今日激務だったから疲れてるんですけど」
何もかも見透かされている事は気に入らないけど、単刀直入に用事だけを聞く。
土曜日の午後家に帰ってからは、なるべく顔を合わせたくなくて用心して動いていたのに、こんな風に待ち伏せされたらどうしょうもない。