シークレット ハニー~101号室の恋事情~
「葉月が俺の事避けてるみたいだから理由を聞きたくて」
「……避けてません」
「俺も目立つのは嫌だから本当なら中で待ちたかったんだけど、管理人だからって勝手に入ったらまずいかと思って」
「当たり前でしょっ。何の問題も起こしていない住人の部屋に入るなんて不法侵入です!」
「だから、危険も顧みずこうして待ってたんだ。
よかったら部屋にあげてくれない?」
そう微笑む五十嵐さんに、今朝福島さんから聞いた噂話を思い出す。
そうか。この人も噂に振り回されてるひとりなのか。
しかも私なんかとは比べ物にならないくらいの全国的な悪口に。
ヒソヒソどころか、テレビでも雑誌でも堂々と話されちゃうなんて、一体どんな気持ちだったんだろう。
「何もしないって、契約書にサインするなら」
ぼそぼそと言うと、五十嵐さんは「サインなら得意なんだ」と笑う。
「カッコつけたごちゃごちしたのじゃなくて、読みやすいサインです」
「葉月が欲しいならいくらでも」
にっこり微笑む五十嵐さんに戸惑いながら、部屋の鍵を開けた。