シークレット ハニー~101号室の恋事情~


「これ、一緒に食べようかと思って」


部屋に入った途端差し出されたのは、五十嵐さんが持っていた紙袋だった。


「一緒にって、部屋に上がる気満々だったんじゃないですか。
あ、これ、駅前のお好み焼き……。
並ばないと買えないって聞きますけど」


中を見ると、木目柄の印刷された発泡スチロールのパックに印刷された店名とロゴがすぐ目に入った。

会社からほど近いそのお店は食事時はいっぱいで、持ち帰りも並ばないと買えないほどの人気店だ。
一度、営業の人がお昼休みに入ったけど、結局戻ってきたのは昼休みの一時間を20分オーバーしてからだった。

そんな人の集まるお店に並んだのか心配になりながら聞くと、五十嵐さんは困り顔で笑った。


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