シークレット ハニー~101号室の恋事情~
その後、せめてお礼にと、茶葉から緑茶を入れて落ち着いたところで、五十嵐さんが言った。
「葉月、今日何かあった?」
急に聞かれて驚くと、「眉間にシワが寄ってる」と指摘される。
「この間うちに泊まった時も、寝てる時シワ寄せてたから気になってたんだ」
ああ、それで突然きたのか。
お好み焼き並んでまでして。
見抜かれるなんて不覚だ。
テーブルの上で湯気を立てる湯飲み茶碗を見つめながら、指摘されたシワを指先でぐりぐりと治す。
「会社って大変なんですよ。呑気にマンション管理してる五十嵐さんと違って」
誤魔化そうとわざと嫌味を言ったのに、五十嵐さんは笑う。
「ああ、マンションの管理人なんて肩書きだけで実際の管理は管理会社に任せてるんだ」
「は……? え、だって、先週私に管理人だって言ったじゃないですか!」
「だから肩書きはね。
それにこの間みたいな苦情処理とか簡単な事はできるし、いざって時マンション内に誰かいた方がいいから」
「そんな楽なの、仕事とは言わないですけど……。
って事は今はプー?」