シークレット ハニー~101号室の恋事情~
「そんな怒んなくても大丈夫だって。
でもあれだな。これで社内の男は寄り付かなくなるかもな」
こんな時に何の心配してるんだろうって、なんかもう何を言っても通じない気がしてきて眩暈を感じる。
「ご心配なく。結婚相手探すために会社にきてるわけじゃないので」
「え、そうなの? 高卒で働き出したりするからてっきり男目当てなのかと思ってた」
デリカシーのなさは相変わらずだと悟る。
もう何を言っても無駄だと判断して、「もういい」と言って社内につながるドアに手をかけたのに、野田が続ける。
「女はいいよなー。結婚すればいいんだから」
野田をきつく睨みつけてからドアを開けた。
なんでこんなヤツが好きだったんだろう。
そういう無駄な後悔をするのは嫌いだけど、そう思わずにはいられなかった。