シークレット ハニー~101号室の恋事情~


そんなイライラを感じながら、そして食堂で後ろ指さされながら。
それでもきちんと笑顔を作ってお客様の対応をしていた私に課長から呼び出しがかかったのは、閉店して業務を終えようとした時だった。

静かな社内に聞こえるのは空調とキーボードを打つ音、書類にボールペンを滑らせる音、それとたまに雑談する声。

そこに響いた「雨宮。ちょっといいか」という課長の声に、フロアにいる全員が反応していた。


「なんでしょうか」


通されたのは応接室だった。
座るように示されたソファに座りながら聞くと、課長は言いづらそうに笑う。


「いや、突然で悪いんだが、雨宮に異動の話が出てね。
来月中旬までに引き継ぎを済ませて欲しいんだ」


異動……?
異動って、だって……。


「今、そんな時期じゃないですよね……?」


四年間勤めてるけど、異動は四半期に一度って認識してるし、実際それ以外の時期で異動した人なんて私の知る限り今までいなかった。
なのに、なんで。




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