シークレット ハニー~101号室の恋事情~


それからすぐに別れたし、あんなのいつも通りの無神経な言葉だって思い込もうとした。
けど、自分でもなんで感じないんだろうっていうのは疑問だったから、なんとなくずっと気になっちゃって。
その後、違う人とも付き合ったりもしたけど、えっちしてもそればかりが気になって気が気じゃなかった。

私が気持ちいいって感じないのはいいとしても、相手を気持ちよくできていないんじゃないかって不安が大きくて。

それに、気持ちを確かめ合う行為なのに、それを好きになれない自分も嫌だった。

その人と別れたのは、それが直接的な原因ではないけど、えっちがぎこちないっていうのはひとつの原因ではあったと思う。


「……帰って」
「え? なに?」
「帰って! もう本当に通報するから!」
「あ、待てって! 帰るから!」


鞄からケータイを取り出した私に、野田が焦った様子で言う。
今さら焦ったって遅いんだから! もう本気で通報してやる!
そう思ってケータイを開いた時。

「お話し中すみません」って声が後ろから聞こえた。



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