シークレット ハニー~101号室の恋事情~


「まだ内密だけど、来月半ばに監査課に新しい課長が来る事になってるんだ。
その関係で、雨宮も同時期にと……」
「この課にいたら、色々と噂ばかりされて野田さんがやりにくいからって事ですよね。
私と違って四大出てるし、会社からしたら期待の星でしょうし」
「雨宮……本当に申し訳ないとは思ってるんだ。
だけど私にもどうする事も……」
「すみません。課長を責めたいんじゃないんです。
ただ……悔しかっただけで」


仕事は、人一倍とまではいかないかもしれないけど真面目に取り組んできた。
胸を張って頑張ってるって言えるくらい頑張ってきた。

同期なのに、高卒ってだけで私だけ給料が低くて、それでも仕事では負けないようにって頑張ってきたのに……。

それが、こんな事で終わってしまうなんて。


「雨宮……」


申し訳なさそうな顔をする課長に、なんとか笑顔を向ける。


「いえ。駄々こねてしまってすみませんでした。
来月中旬に引継ぎできるように準備を始めます」


明るく言った私に、課長はつらそうに微笑んで「ああ」とだけ言った。




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