シークレット ハニー~101号室の恋事情~
五十嵐さんの持ってきてくれたラベンダーの入浴剤は、薄紫色を白く濁らせた感じだった。
ラベンダーの落ち着く香りがお風呂場全体を包み込んで、自然と呼吸が深くなる。
湯船につかりながら、ただぼんやりと湯気の上がる天井を見つめる。
そのまま目を閉じてしばらくそうしていた。
頭が空っぽで、今日の事とか何も邪魔してこないこの時間が気持ちよかった。
その後、10分ほどそうしてからお風呂を出ると、カチャカチャという食器の音に気づいた。
慌てて部屋着に着替えると、腕まくりして食器を洗っている五十嵐さんがいて。
水道を止めた五十嵐さんが、私に気づいて振り向く。
「どうだった? ラベンダー」
「あ、すごく気持ちよかったです。
香りもよかったし、色も可愛くて」
「そう。よかった」
「っていうかあの……さっき帰りませんでしたっけ?」