シークレット ハニー~101号室の恋事情~
「生きるのって、疲れる……」
紅茶の水面には、天井の明かりが映って揺れていた。
私の吐いた弱音を聞いた五十嵐さんは私を見つめた後立ち上がり、私の後ろに回る。
そしてそのまま腰を下ろして後ろから私を抱き締めた。
「紅茶がこぼれます」
「うん」
私の手からカップを取った五十嵐さんが、手を伸ばしてそれをテーブルの上に置く。
それからまた優しく私に腕を回した。
抵抗する必要や理由があったんだっけと疑問が浮かぶほど、抵抗する気になれなかった。
それが優しさからの行動だって分かっていたし、もしも違っていたといても、相手が五十嵐さんなら私は許すんだと思う。
五十嵐さんを好きだとかの恋愛感情は置いておいて。
五十嵐さんの、優しい腕や指が好きだから。