プラトニック
「家まで送るよ。子供の俺じゃ頼りないやろうけど」


その言い方が可愛くて、つい笑ってしまった。


瑠衣は原付を押しながら、わたしのマンションまで送ってくれた。

無事にエントランスの前にたどりつくと、彼はヘルメットを被りシートにまたがった。


「じゃあ、おやすみなさい」


エンジンが低い音をたてる。


「うん。おやすみ」


ハンドルに手をかける彼の横顔につぶやいた。


急に寂しさが襲ってきて、わたしは唇をかんだ。

無意識にすがるような目で見上げていたらしく、瑠衣はハンドルから手を離して言った。


「何すか? そんな顔して」

「えっ、別に、何も」

「素直じゃないな~。ホンマは俺とキスしたいくせに」


からかうように言われ、わたしは彼の背中を思いっきり叩いた。


「痛って~!」

「アホなこと言ってないで早く帰りなさいっ」

「はいはい」


可笑しそうに肩を震わせながら、瑠衣は再びハンドルを握る。


「じゃあ、今度こそ本当におやすみなさい」


原付が走り出すと、彼の姿はあっという間に見えなくなった。

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