プラトニック
夢
京都は観光客であふれていた。
家族連れが多いのは、さすが連休中、といった感じだ。
丹後半島までいっきに北上したわたしたちは、日本三景のひとつ“天橋立”を訪れた。
「すごーい! きれい!」
傘松公園からの景色に、はしゃいだ声をあげる。
深緑の松林に覆われた砂州が、青い海にくねくねと走り、本当に橋が架かっているみたい。
曇りかけていた空はまたきれいに晴れ上がって、よりいっそう景色を引き立てた。
モーターボートにも乗った。
波で体が浮くようなスリルと、水しぶきの迫力に、わたしは大興奮だった。
「葵、はしゃぎすぎやから!」
瑠衣に突っ込まれるくらい、わたしは騒いでいた。
よけいなことは忘れて、楽しみたい……瑠衣と最高の思い出を作りたかったんだ。
一日中遊びまわって、宿泊する旅館に着いたときには、すっかり日が暮れていた。
「素敵なお宿やね」
思わずそんな言葉がもれるくらい、雰囲気のいい旅館。
館内のあちこちに生け花がさりげなく飾られ、女性客が喜びそうなアメニティも充実している。
お風呂はもちろん、温泉の露天風呂つきだ。
浴衣を数種類の柄から選べるのが嬉しかった。
「瑠衣……。ここ、高かったんちゃう?」
「葵はそんなこと気にせんでええねん」
実は、今回の旅費は瑠衣もち。
もちろんちょっとした食事代とかはわたしも出しているけど、宿泊費などは瑠衣が出すと言ってきかなかった。
彼いわく、この旅はわたしへのプレゼントらしい。
ちょっと申し訳ない気もするけど、やっぱり素直に嬉しく思った。