プラトニック

手紙


あなたを忘れるために流した涙の量。

あなたが夢に出てくるから眠れなかった夜。


胸を切り裂くような慟哭の日々を経て、やっとたどり着いた今があったのに


「――…瑠衣」


ガードレールに座るあなたを見た瞬間、心は簡単に、3年前に戻ってしまった。



瑠衣は、待っていてくれた。

時間はとっくにすぎているのに。


「どうして……?」


髪が伸びて、少し大人びた表情の瑠衣。

だけど笑顔は、悲しいくらいあの頃のままで――


「葵のこと待ってるって、言ったから」


返ってきた言葉すら、あの頃と同じだった。


 
瑠衣は立ち上がり、一歩ずつ、わたしに近づいてくる。


そばに来ると少し背が伸びた気がした。

たぶん、気のせいじゃない。

わたしははっきりと瑠衣の身長を覚えていた。

だってこの3年間、いつもあの目線の高さを探していたのだから……。


「久しぶり、葵」


その言葉だけで胸が張り裂けそうになった。


わたしのすぐ目の前に瑠衣が立っている。

瑠衣の匂い。

全然、変わっていない。


会いたかった。

この3年間ずっと会いたかった。


「俺、実はな」


すっと背筋を伸ばして言った。


「明日からアメリカに行くねん」

「え?」

「留学。しばらくは向こうで暮らすと思う」


そっか……手紙に書いていた、日本を離れるってそういう意味だったんだ。


それで、会いにきてくれたんだね。



< 294 / 308 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop