インディアン=スノー=ディ
梅雨が開けてすぐの朝、
駅の構内で彼女を見かけた。


不思議な光景だった。


その駅は、
いくつもの路線の接続駅で、
朝夕の
ラッシュ時には
ひどい混雑になるので
有名な駅だった。


その
ラッシュの
ピークの時間、

彼女は
その駅の構内を
気持ちの良いペースで

すいすいと歩いていた。


ぼくは、
しばらく
目が離せないでいた。


人混みの中を、
彼女は
まるで
1人で歩いているように
ペースを崩すこともなく、
人を避けるでもなく、

かといって
周りの人が
彼女を避けている風でもなく、
自在に歩いていたのだ。


まるで
魔法でも見ているようだった。

ぼくは、
その姿を目で追っている間にも、
何人もの人の肩にぶつかり、

いつか人の流れに乗っていた。

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