青色キャンバス
「ふざけてないでほら、描いて」
スケッチブックを秋君に返して私も自分の絵を描く。
「ね、先輩。先輩の絵みたいに俺も上手くなる?」
不意に秋君が尋ねてきた。私はスケッチブックから目を離す。
…私も、同じ事を蛍ちゃんに聞いたっけ。
『ねぇ蛍ちゃん、私も蛍ちゃんみたいに上手く描けるかな?』
どう描いてもどんなに蛍ちゃんの絵を真似てみても上達しなくて自信が無くなって…
でも蛍ちゃんは言ってくれたんだ。
『俺みたいじゃなくて』
「私みたいにじゃなくて」
誰かと同じように、誰かの真似とかじゃなくて…
『お前が描きたい絵を目指せよ。そうすればおのずと実力もついてくるんじゃねぇの?』
そうだ……
だから私は私が描きたい絵を描けるように努力した。
「秋君が描きたい絵を目指して努力すれば、実力もついてくるよ。だからまずはどんな絵を描いていきたいかを見つけたらいいんじゃないかな?」
「描きたい絵…」
秋君は何か考え込むように空を見上げた。
「見つかったらそれをひたすら追い求めればいいんだよ」
私がそうだったように…