青色キャンバス
「先輩の描きたい絵って何?」
秋君は空から目線を外し、今度は私を見た。
「私の?私はね…」
私はあの時……
どんな絵を描きたいと思ったんだっけ…
目をつぶり、遠い日の想いを呼び起こす。
『なら私は、現実には無いような夢を絵に描きたい。何年経っても歳をとっても、夢をずっと持ち続けられるように!』
…夢……
私は夢を絵にして皆の可能性とか、未来の力になるような絵を描きたいって思ったんだ…
「先輩?」
物思いに耽っていた私の顔を秋君はのぞき込んだ。
「あ、ごめんね。懐かしくなっちゃって。私の描きたい絵の話だったよね」
私の描きたい絵…
久しぶりに思い出した。
私の原点…
「夢を与えられるような絵を描く事。それが私の描きたい絵だよ」
「夢……。だからか、先輩の絵って幻想的で引き込まれそうな絵だし、夢をキャンバスに具現したような感じ」
そう言ってもらえるとなんだか嬉しいな…
「俺、俺も自分の描きたい絵が何なのか見つけたい。先輩の傍にいたら見つかりそうだから、これからもよろしくね、先輩?」
秋君はニッと笑いスケッチブックに向き直る。
秋君、頑張れ…
真剣にスケッチブックに鉛筆を走らせる秋君を微笑ましく見つめたのだった。