青色キャンバス
「俺、ここの新入生なんですけど、遅刻しちゃって。場所わかんなくてさ迷ってたんですけど…」
今は入学式の真っ只中。
迷ってたって……
「なら急がないと、せっかくの入学式なんだから」
私は可愛い男子の手を引く。
なのに何故か男子は動こうとしない。
「入学式、行かないの?」
「うーん、出ない事にします!」
…は…い…?
新入生の為の入学式に出ない人がどこにいるんだというんだろう。
ここにいるけども…
「ね、先輩?」
急に可愛い男子が馴れ馴れしくなった気がする。
「俺、佐久間 秋(さくま あき)って言います。よろしくして下さいね!」
佐久間 秋と名乗った彼の距離が心なしか近い。
「あ…佐久間…くん…?」
「秋でいいです」
「でも………」
初対面で呼び捨ては…ねぇ?
「あ、き、でしょ?はい、言ってみて!」
「あ、秋………くん…」
「うーん、まぁ合格♪」
そう言って佐久間…じゃなかった、秋君は笑った。
「あ………」
綺麗な笑顔……
色で例えるなら黄色。
それもやまぶき色よりだ。
「どうしたの?先輩」
「あ、ううん…何も…」
綺麗な笑顔、私の無くしてしまったもの…
「先輩…?」
「えっ………」
ふわりと、お日様の良い匂いがした。
何故か秋君に抱きしめられている。
私…なんでこんな事に??