青色キャンバス
「今の私に、絵と生きていく資格なんかありません」
「なんでそう思うの、真白」
「…私は…私の傷を見てみぬふりをする為に絵を描いてるんです。何もかも忘れて、少しでもその痛みから逃げる為に…」
私の絵は……私の苦しみだ。
そんな絵は、きっと悲しみしか生まない。
「それは……いけないこと?」
「………え…?」
「それは絵を描いちゃいけない理由になるの?」
だって…………
そんな悲しみを埋めるだけの絵なんて…
「その悲しみも真白の思いよ。あんたのように何かを抱えている人間には何か伝わるんじゃない?」
そういえば……
伊達さんの絵もそうだったっけ………
美しく明るい絵の裏側にある真実。
悲しみ………
あの絵を見た時、 私は何故か心が軽くなった。
私だけじゃないんだと……
「真白、あんたは生きてる」
「先生……」
「今を見つめなさい、真白。真白の傍には、真白を大切に思っている人間がたくさんいる事を知りな」
そう言って松永先生は私の肩を叩く。
「じゃ、いくわよ!!海よ、海ー!!」
笑いながらバスを降りていく先生。
「先生……」
私には…今を見る勇気なんてありません……
だって、今を見てしまったら……
蛍ちゃんがいなくなってしまった事を認める事になる。
「………怖くて…私にはとても耐えられません……」
私は……弱い………
きっと、この闇から逃れられない………