青色キャンバス
「俺、先輩の傍にいたいんだけど」
「え、今いるよね?」
「……………はぁ」
私の返答に秋君は深いため息をついた。
「意味分かってないだろ、絶対」
「………………?」
ど、どういう事?
なんだか秋君、不機嫌みたい………?
「わー……怖い…」
ジト目で睨まれた私は、明後日の方向を見てその視線から逃げた。
「俺、最近先輩は今を見て生きられるようになったんじゃないかと思ったんだけど…」
今、つまりあの日ではなくこの時を見て生きているんじゃないかって事……なのかな…?
だとしたら……
「うん、私……最近はね、秋君と一緒にいると楽しくて…一人でいた時みたいに怖い夢も見なくなって……」
「うん」
「いつも、蛍ちゃんに申し訳なくて、大好きだったのに…謝ってばっかりだったけど、今は…今は、少し向き合えた…気がする」
あんなに悲しくて苦しかったのに、またこんな穏やかに蛍ちゃんに向き合えるなんて思ってなかった。
「そっか………」
―ポンッ、ポンッ
秋君は私の頭を優しく撫でる。
年下なのに、秋君には頼りっぱなしな気がする。
「秋君、私、秋君がいたから……きっとこんな風に今を見れたんだと思う。」
やっぱりまだ、あの日のことは辛いし、忘れられない。
それでも……
あの日からは少しだけ前に進んでいた。
「俺……いつか先輩に話したいことあるって言ったの覚えてる?」
話したいこと………
一つだけ心当たりがあった。
「あの、聞いたら後悔するかもっていったやつ…かな?」
「そう、それ」
秋君は何故か私に、覆いかぶさってくる。
「……え、秋君……?」
「…俺、雛先輩とこの先ずっと一緒にいて欲しい。言っとくけど、今もいるじゃん、とかボケいらないから。先輩鈍感だから直球に言うけど、俺は先輩が好きだからずっと傍にいたい。わかった?」
………………好きって……
秋君、今好きって言ったの……?
「…………………」
「……やっぱり固まったか。ごめん、先輩。でも…もっと近づきたい、先輩が好きだ」
いつもみたいにふざけてなくて、真剣に私を見つめてる。
……本気……なんだ……
私にはもう、秋君の作り笑いと本当の笑顔の違いも、冗談か本気かもだいたいわかる。
いつの間にか、秋君の事ばかり見てた。
心の中では、きっと私は………
ずっと秋君を想っていたのかもしれない。