青色キャンバス
「…秋君、どうかした?」
顔をのぞき込むと、秋君は私をギュッと強く抱き締めた。
「あ、秋君!?」
「もう、先輩ほど綺麗な人、見たことないよ。純粋すぎ」
秋君が私を胸に抱いたまま話すから、秋君の声が反響して耳元がゾクゾクした。
「私より綺麗な人、沢山いるよ」
「俺は心の話をしてんの!あ、もちろん雛先輩は顔も超可愛いけどね」
また、そんな事言って!!
お世辞にもほどがあるよ!というか、照れるよ!
いくらお世辞でも!!
「先輩、俺の事、嫌ってほど教えてあげる。隅から隅まで……」
「う、うん?」
秋君は何故か私の顎をつかみ、距離を縮めてくる。
「先輩の好みに合うといいんだけど、まぁ、期待に応えられるように手技を磨く事にするよ」
「…なっ!ななっ!」
それってつまりアレだよね!?
私、まだ誰ともシタ事無いのに…………
そうだ、私…蛍ちゃんとはそういうの、しなかったな……
『………お前の事、大事にしたい』
今時古いって思われるかもしれないけど、蛍ちゃんなりに私を守ってくれてた。
少し寂しいなって思った時期もあったけど、そんな事も忘れるくらい、蛍ちゃんの傍にいることは幸せだった。
「先輩、俺もうバイトに行くから、後からゆっくり来て?場所、メモっておくから」
秋君だけ布団からでて準備を始める。
消えた温もりに寂しくなった。
「……せーんぱい、早く会いに来て?」
秋君はまるで安心させるように横になったままの私の額にキスをした。
秋君には、かなわない。
私の考えてることをすぐに察してしまうから………
「すぐに会いに行くからね…」
だから、無事でいてね。
私より先にいなくならないでね。
「うん、待ってる。鍵、ちゃんと閉めてよ?」
そう言って秋君は家を出た。
私は言われた通りにすぐ鍵を閉めた。
それから誰もいなくなった部屋を見渡す。
「………秋君……」
いつの間にか、私の生活の一部に秋君がいた。
一人きりの部屋は寂しくて、何より冷たい。
「早く…会いたい」
今さっき別れたばっかりなのに、不思議。
ひとときも離れたくない、離れている時間が不安になる。
「もう、重いって思われてもいいや、秋君に会いに行く!」
私は急いで準備をし、秋君のバイト先へと向かった。