青色キャンバス



「先輩、俺んちこない?」


それは志賀さんと別れた後の帰り道。
秋君の提案で急きょ秋君の家にいく事になった。



「はい、どーぞ」



秋君に促されて入ったのは、秋君のマンションの一室。
とても綺麗な部屋だった。



「いつも先輩の家にお邪魔してたから、こんどは俺んちに来てほしかったんだよね。俺の事、知ってほしーし!」



秋君からジンジャーエールを渡される。


あれ?
これ、ジンジャーエール…………


「ねぇ、秋君。ジンジャーエール好きなの?」

「うん。先輩はピーチジュースが好きなの?」


「うん、甘くておいしいから。あ、でもジンジャーエールも好きだよ?」



私たちはお互いに質問をしあいながら時間を過ごした。しばらく話していると、視界の端に写真立てがあることに気づいた。



「これ…………」

「それ、俺の家族。先輩には話してなかったっけ、俺んちは両親ともに健在だけど、仲は最悪だな。他人と同じくらい俺に無関心なわけ」


秋君は笑う。
ただ、その笑顔は悲しそうに見えた。



いつもの作り笑い。
最近は少なくなってたのに…



「秋君、無理しないで。私も、秋君の悲しみを一緒に受け止めたい」



秋君がそうしてくれたように………

全てが消えるわけじゃないけど、一人では押し潰されて苦しい悲しい事も、誰かと分け合うと半分、またその誰かと分け合うと半分になっていくから……












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