青色キャンバス



「俺の話なんて、つまんないよ?」

「そうかな?大切な人の話は、なんでも聞きたいって思うよ?」


好きな人だから、そう言いたかった。
でも私は、秋君がこんな時にまで蛍ちゃんとの間で揺れ動いて、”好き”という言葉を言うことができなかった。


大切な人、少し逃げた言い方でしか、秋君が私にとって大切だとと伝える方法がみつからない。


「先輩…………」



私は、秋君の頬を両手で包んだ。


そんな、不安そうな顔をしてるのに、素直に頼れないのは…
今まで一人で生きてきたからなのかな…



そう思ったら、その寂しさを埋めてあげたくてどうしようもなくなった。



「…俺の家は美術商つまりギャラリストをやってるせいか、裕福だった」


美術商、ギャラリストは画家を売り出す為のサポートや、価値ある美術品を集めギャラリー、個展を開いたりする仕事だ。



「美術品に囲まれて育ったからな、俺も両親同様に目利きはできた。むしろ、親より出来たな」


あ………
じゃあもしかして、伊達さんと会ったとき、様子がおかしかったのは……


「伊達さんと顔見知りだったの?」

「あ、はは……バレてたか。取引先だよ」



やっぱり、伊達さんの事知ってるみたいだったし……


「俺達、美術商は才能、本物を見抜く力が必要だろ?だから、俺にもその力があるって分かって、あいつらは利用する事しか考えてなかった」


あいつら………
両親をそんなふうに呼ばなければ心を守れないほどに……苦しかったんだ。













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