青色キャンバス
「先輩、テーマ決まったんだ?」
美術室でキャンバスに向かう私に、秋君が声をかけてきた。
「え、あ…………」
「決まったよ」そう伝えようとして言葉をつまらせてしまった。
蛍ちゃんの事もテーマに入ってるって知ったら、秋君は嫌な気持ちになるかもしれない。
悲しませるかもしれない、怒らせるかもしれない………
そう思ったら、私は何も言えなかった。
「ううん、まだ決まってない…」
私は、咄嗟に嘘をついてしまった。
「………先輩、ちょっとこっち来て」
怖い顔で私の腕を強く引き、歩き出した秋君。
嘘だってわかっちゃったのかも………
その言葉が嘘か本当かなんて、すぐにわかるくらい、私たちは一緒にいたから………
「秋君、腕痛い…………」
「俺も痛いよ?心が」
振り返らない秋君の背中を、私はただ見つめる。
傷つけたくないと思う気持ちが、時には裏目に出てしまう事を知った。