青色キャンバス
秋君は、私を屋上へと連れてきた。
幸い、放課後で屋上へとくる生徒はいなかった。
「先輩、俺に嘘をついた理由を教えて」
真っ直ぐに私をい抜くその目に、私は申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
どんな事でさえ、秋君には伝えるべきだった。
嘘をつくんじゃなくて、言えなかった理由をちゃんと話せば良かったんだ………
「秋君、ごめんなさい。私、本当はテーマ決まってた」
「うん、知ってる。だから、きっと俺を守る為の嘘だったんだろうって分かった。でも、俺……ちゃんと教えてほしい。先輩の全てが知りたいんだよ。先輩が教えてくれたんだろ、だから俺も、どんな雛先輩だって受け止める」
私が……秋君に言ったんだった。
そうか、どんな私の想いも、秋君は私の想いだから、受けとめようとしてくれてるんだね。
自分の言った言葉が、こうした形で返ってくるとは思わなかった。
「うん、すぐ言えなくてごめんね。私、コンクールでは空と海を描こうと思うの」
「空と海…………」
そう、私にとって空と海がどんなに大切な事か、秋君は知ってる。だからこそ、秋君には伝えづらかった。
「海はね、秋君を想って描くの。でも、空は…………」
「東先輩でしょ」
秋君の言葉に、私は頷く。
「だから言いづらかったの?だとしたら、俺は東先輩の事を想ってる雛先輩も含めて、全てが好きなんだよ」
「………蛍ちゃんの事を忘れられない私も含めて……?」
他の男の人を想ってる私も受けとめようとして………
本当に、この人は海だ。
遠くから私を見守る、高い場所から決して手は出さずに成長させてくれて、厳しさの中に愛情をくれた空と、後悔を形にしたような足場の悪い砂浜で、もう歩く希望も失った私を、優しく導いて、受け止めてくれる海………
「まだ迷い続けてる私が、心に占めるのはふたつの恋なの」
「……そっか。なら、雛先輩を応援する。どんな形であれ、俺は雛先輩を支えたい」
秋君………
ありがとう、私はもうたくさん支えてもらってるよ。
私の、心………
ちゃんと向き合って決めたんだ。
どんなに辛くても、やり遂げよう。
「ありがとう、秋君」
「俺にも、先輩の世界を見せてくれるんだよね?」
「もちろんだよ!」
そして私たちは手を重ねる。
きっともう、辛くても向き合える。
私は、私には秋君がいるんたから……………