青色キャンバス
あれから、数日が経った。
私は美術室で一人、蛍ちゃんの事を考えながら、青空を描いていく。
授業をさぼってここへ来るのは久しぶりだった。
秋君と出会ってから、不思議と人を避ける事がなくなって、傍に誰かがいる事、それが普通になってた。
でも、蛍ちゃんの事を考える時は、一人になりたいと思う。
蛍ちゃんとの思い出は、とても温かくて、優しいのに、あまりにも悲しくて、残酷だったから…
私はその度に胸が痛んで、泣いてしまう。
私の罪に気づいて罰を求めてしまう。
前を向けないままの弱い私は、誰にも知られたくないから…
「大切にしたい想いなのに、どうしてこんなに悲しいんだろうね、蛍ちゃん…」
いつでも私を守ってくれた蛍ちゃん。
私にはあなただけだと思いました。
今でも、私は蛍ちゃんがまた雛って呼んで笑顔を見せてくれるんじゃないかって思うよ。
まるで昨日の事のようにその手の温もり、引き寄せる力加減だったり、匂いまで思い出せるの。
「私、蛍ちゃんみたいに強くないから、また……」
また、泣いちゃうよ。
どうして、置いていっちゃったの?
私は、どうしてあの場に残らなかったの?
今でも、何度となく問い続ける。
私の中には、悲しみと忘れられない恋が残る蛍ちゃんへの想いと、幸せな今の溺れたい恋、秋君への想いの二つが相反して存在する。
「ううん、違う。私が描きたいのは、私の記憶に残る蛍ちゃんとの幸せな時間だ」
だから、蛍ちゃんとの楽しかった事を思い出して、キャンバスに向かいたい。
私は今まで描いていたキャンバスを新しいまっさらなキャンバスにかえる。
「うん、頑張ろう」
無理やり笑顔を作ってみる。
そうしたら、不思議と前向きになれる気がした。