青色キャンバス
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ーガラガラッ!!
青空を描き終えたところで、突然、勢い良く美術室の扉が開いた。
「やほー、先輩………」
振り替えると、疲れた顔で笑う秋君がいた。
私は苦笑いを返す。
秋君、また女の子達に追いかけ回されてたんだろうなぁ。
「ふふっ、モテる王子様は大変だね。たくさんのシンデレラに追いかけられて」
「ちょっと先輩、他人事だと思ってるでしょ。そこはヤキモチくらい妬いてよ、俺が誰かの王子様になってもいいの?」
むくれる秋君に私は歩み寄る。
「先輩?」
近づいてきた私を、秋君は不思議そうに見つめてくる。
いつも完璧な秋君が、私だけに見せるゆるんだ表情、少しぬけてる秋君、その仮面が壊れた時、私はとてつもなくこの人を愛しいと思う。
「私、秋君の事とられたくないな……」
秋君の私より大きな両手をとり、握る。
この温かい手を、私は自分のエゴで手放したくないと思ってる。
「なっ………」
真っ赤になった秋君、時々見せる色んな秋君に私は心奪われる。秋君を知るたびに、私は秋君が大好きになっていく…
「先輩、俺、どんどん雛先輩が好きになるから困る。あんまり煽るなって……」
私もだよ、秋君。
秋君と一分、ううん、一秒を重ねていく度に私は秋君に恋をしていくんだと思う。
「そうだ、秋君。これから私に秋君の時間をくれないかな?」
「ん?先輩の誘いなら喜んで」
「良かった、ありがとう。じゃあここに座って!」
私は秋君を絵の前に座らせる。
「今、絵の半分…青空を描き終えた所なの。これから海を描きたくて、秋君を想って描く絵だから、傍にいてほしいんだ」
秋君と一緒にいたら、私は秋君の事をたくさんたくさん考えるから、秋君を想う気持ちの一つ一つ、過ごす時間の一秒、一秒を大切にしたい。
「じゃあ、俺の事でいっぱいいっぱいの先輩を、俺は眺めてようかなー」
不敵な笑みを浮かべる秋君になんだか恥ずかしくなる。
私、なんだかとんでもない事を言ったんじゃ?
もう、秋君はイジワルだ。