青色キャンバス


秋君のマンションにつくとすぐ、マンションの下で秋君が私を待ってくれていた。


無言で秋君に手を引かれながら部屋の前までくる。



「先輩、入ってよ」


「うん…………」


秋君に促されるまま、私は秋君の部屋へと入る。




ーガチャンッ



背中でドアが静かに閉まったのがわかる。



「先輩、俺………」

「ごめんね、秋君………ごめんねっ………」



秋君は泣きそうだった。
その震える声が、表情が私の心に突き刺さる。


これが、私のもうひとつの罪で、痛みはその罰。


「何も言ってくれないんだな」

「ごめんね……」


「そればっかだよな、先輩………」

「ごめっ………え………?」



何故か秋君は私の頭を優しく撫でる。
そして切なげに微笑んだ。
秋君、どうして私に優しくするの………?



「先輩、俺のお願いを一つ叶えてくれたら、別れてあげる」



秋君は急に冷たい笑みを浮かべ、私の肩を掴んだ。
突然の変化に、私は言葉を失う。


「先輩がを抱かせてくれたら、俺が捨ててあげる。今までだってそうしてきたし…」


弱い私が、秋君をちゃんと振ることはできない……
どこまでも身勝手な私に、秋君は気づいてる。


秋君の冷たい態度の裏に、優しさがある事に私は気づいてしまう。それほど、私は秋君と一緒にいたから……


どうせなら、もっと怒ってくれれば良かった。
そうしたら、私も秋君も楽だったのかもしれない……












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