青色キャンバス



ー雛side


ーガラガラガラッ


扉が開いた…………
今日は週一日の部活が休みの日。


休みの日にまで美術室に来るのは、私か奈緒ちゃん、そして………



「秋君……………」



窓から少しだけ教室の中を覗く。
そこには、やっぱり秋君がいた。



「先輩、約束覚えててくれてありがとう…」


秋君は私の絵にかかる布に手をかける。


「一番に見せたい相手が俺で、本当に嬉しかった」



私も、秋君に一番に見てもらえて、嬉しいよ。
もう叶わないって思ってた約束だから………


ーパサッ



布が落とされて、そこには私の絵、『タイトル:最初の空、最後の海』がある。


「………これ………」


秋君が息を呑むのがわかった。



秋君の瞳に、私の絵は、どう映ってるんだろう……


胸がドキドキと煩い。



「先輩………俺、やっぱり先輩はすごいって思うよ。こんな、絵をかける奴、そうそういない……」



秋君は愛しそうに私の絵をその手でなぞる。


「先輩、俺、先輩に会ったら伝えたい事があったんだけど…」


………伝えたい事?
私は秋君の声に耳を傾ける。


「先輩、俺、佐藤先輩に言われたんだ。傷つけるかもしれなくても、傷つけられるのかもしれなくても、好きな相手なら、それも含めて一緒にいるべきだって」




傷つけるかもしれなくても……?
私が、秋君を傷つけるかもしれなくても、蛍ちゃんを悲しませるかもしれなくても?


「俺、言われて気づいた。俺達の生きる時間は限られてるだろ?だから、例え誰かを傷つけるかもしれなくても、それが俺の大切な人であったとしても、俺は好きな人と一緒に生きていきたい」




秋君………
それって、どういう意味なの?


秋君は、まだ私の事………想ってくれてるの?
あんなに、酷い事をしたのに、それでも秋君は……








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