青色キャンバス
「って、今すぐにでも伝えたいのに……。なんで、先輩いないんだよ、こんな、絵だけ残して………。約束なら、直接俺と会ってよ……」
秋君………………
私も会いたい。
秋君が会いたいって言ってくれて嬉しいよ。
でも私は……素直にここから飛び出して、秋君に会いに行けるほど、強くはないんだ。
私、そんな弱い私が嫌い。
「俺、雛先輩の事、諦めないから。だから、先輩も諦めないで…俺の事」
………諦めなくてもいいの?
「先輩、今でも好きだよ」
「っ!!」
秋君………
私も、秋君が…………
ふとした瞬間に、あなたを思い出す。
あるはずのない秋君の残像と、温もりを探してしまう。
「…っ……私も、好きだよっ……」
はらはらと涙が流れる。
好きだよ、秋君には聞こえないように小さく応える。
「先輩、会いたい……っ…」
「秋君…………私も会いたいっ……」
こんなに近いのに、私達は遠いね。
秋君、泣かないで………
私には、そんな事言う資格ないけど、やっぱり大切な人には幸せでいて欲しいよ……
「秋君、私……どうしたらいいの?」
動揺したせいか、足元の何かを蹴飛ばしてしまう。
-カラン、カラン……
まずい、と思った時には遅かった。
水入れの缶を誰かがベランダに干したんだろう、それは無情にも私の足元に転がっている。
「………雛先輩?」
「………秋君……………」
音に気づいた秋君と、見つめ合う。
どうしよう……
ずっとここにいたの、バレちゃった。
秋君に直接会うなんて、私まだ……そんな勇気無いよっ………
「ごめんなさいっ……!!」
私は咄嗟にそこから逃げ出す。
「先輩!?待って!!」
秋君の声が聞こえたが、無視をした。
ベランダから隣の教室に入り、そのまま校門へと向かう。
外へ出ると、ポツリと何かが頬に当たった。
ーザァァァァッ!!
そしてそれは本降りになり、私を叩きつける。
「雨…………」
私の大嫌いな雨だった。
町中に出ると、歩みを緩めた。
これだけ人がいれば、誰も私を見つけられないもんね………
傘もささない私を、周りの人は怪訝そうに見てきた。
雨の冷たさと、視線の冷たさに、私の心と体も冷えきっていく……