青色キャンバス
07.青色キャンバス
ー4年後
「んっ……………」
朝の眩しい光に、目を覚ます。
そこには見慣れた白い天井が広がっている。
隣を見れば、まだ夢の中にいる秋君が眠っていた。
「ふぁ………ひ…な……」
ふふっ、どんな夢を見てるのかな?
夢の中でも、私の存在がいるのは嬉しい。
ーチュッ
私は秋君の額にそっと、口づけた。
それから秋君を起こさないようにそっと、ベッドを抜け出す。
「いい天気…………」
ベランダに出ると、青空が広がっている。
高校を卒業して4年の時が経った。
私は22歳、秋君は20歳になり、婚約をして同棲している。
私は、あのコンクールで絵が評価され、画家として駆け出した。そして秋君も、美術商として両親の元で学んでる途中だ。
私達はあの日交わした夢を叶える為に、今を一生懸命に生きている。
「雛?」
眠っていた秋君がむくりと起き上がり、こちらを見つめている。太陽が眩しいのか、目を細めてこちらを見る秋君に、私は笑いかける。
「おはよう、秋君。愛してる」
「雛………俺も愛してる」
秋君に近づいて、ぎゅっと抱きつくと、秋君は優しく抱き締め返してくれる。
「雛って、可愛いままだよなー、俺、いつまで嫉妬に苦しまなきゃいけないんだろ」
「ふふっ、この前La Première étoileに行った時も志賀さんに噛みついてたよね?」
「笑い事じゃないから。これだもんな、雛は無防備だし、佐藤先輩でも紹介してあてがっておけば、手を出されずに済むか?」
ブツブツと呟いている秋君に笑ってしまう。
志賀さんと秋君を見ていると、私まで楽しいんだよね。
「奈緒ちゃんに怒られるよ?」
「佐藤先輩も雛を狙ってるから、同時に攻略するにはちょうどいいんだよ」
攻略って…………
秋君は一体、何と戦ってるの?
「私、秋君だけだよ?秋君以外考えられないのに」
「ははっ、すごい殺し文句!」
私達は笑い合う。
そして秋君は私の左手をとり、薬指に口づけた。
そこには、婚約指輪が光っている。
「本当、諦めないで良かった。今こうして雛といれるのが、すごい嬉しい」
「私もだよ………。沢山、すれ違ったけど、私達はもうずっと一緒だね」
私達はたとえ、相手を傷つけてしまうかもしれなくても、傷つけられるかもしれなくても………
傍で、共に生きていく事を選んだ。
「俺のお嫁さん、愛してるよ。ずっと俺の傍にいて」
「うん!秋君を愛してる」
そして口づけを交わす。
私達の夢が叶う日は近い。
青空に見守られて、私達は未来を生きていく。
たくさんの時間を重ねて、たくさんの想いを共有して……
私達の心のキャンバスに、今日の日の青空を描こう。
私達を見守る青空を、いつまでも忘れないように……
END.
tank you~☆*∴