青色キャンバス
「俺に…俺だけに……」
「え…?」
「ううん、何にも」
何かを言いかけた秋君は私に苦笑いを向ける。
秋君……?
「早く食べちゃわないと」
「あっ…本当だね」
話に夢中で手が止まったままだ。どうやら秋君も同じみたい。
「冷たい」
「ふふっ…でも美味しい」
苦い顔をしている秋君がなんだか可愛い。
「あ、そういえばお金…」
すっかり忘れてたけどお金払ってない!
「払うとか言わないでよ?ここは男を立ててほしい所なんだけど」
「でも……」
「でもじゃない。先輩の時間をもらえただけでいいから」
…それは…
私も同じなのに……
私も秋君が一緒にいてくれたおかげで一人で苦しまずにすんでる。
「食べたら画材、見に行くんでしょ?」
「あ……うん!」
私は急いでホットドックを口に運ぶ。
そんな私を秋君は笑いながら見つめていた。