桜涙 ~キミとの約束~
「二人以外だったら約束破ってるって事だよね」
私が言うと、そこでやっとリクの視線が私へ向けられる。
一瞬、心臓がドキリと跳ねたのは体育祭の事を思い出してしまったからだ。
そんな私の動揺に気づかず、リクは私を真っ直ぐに見つめながら話す。
「……小春はずっと忘れてたんだろ?」
「夢じゃなければ」
「なら、それが実際にあった事だとしても、相手だってもう忘れてるんだろうし、気にしなくていいんじゃない?」
リクは言い終えるとストローを口に加えてアイスコーヒーを一口飲んだ。
「でも、約束したし……」
約束という軽くない行為になおも食い下がる私。
奏ちゃんは黙ったまま、私とリクの会話を聞いているだけだ。
奏ちゃん……体調でも悪いのかな、と気にしていたら、リクの柔らかいけれど強さを持った声が耳に届く。