桜涙 ~キミとの約束~
このフロアにある憩いのスペースと言えば、ディルームと呼ばれる談話室くらい。
この病院に移ってすぐに一度だけ立ち寄ったけど、それ以来訪れてはいなかった。
……と言うより、検査続きで寄る余裕がなかったと言う方が正解だろう。
ピピピと、ワキにはさんでいた体温計が測定の終了を告げて。
取り出してサイドテーブルに置くと、視線を外の景色へと動かす。
青空の下を白い雲がゆっくりと流れ、太陽の光を浴びた木々が楽しそうに揺れた。
その光景に、ちょっとだけ元気をもらえた気がして気持ちが上向きになる。
「朝ご飯食べて、落ち着いたら行ってみようかな」
まだ検査結果は出ていないけど、病は気からと言うし。
私は自分を元気づけるように口元に笑みを浮かべ、ひとつ、大きく伸びをした。