桜涙 ~キミとの約束~
「えっと、検査入院中で」
「あー、じゃあやっぱりそうだ。看護士さんがさ、可愛い子だって話してたんだよ」
「えっ!? そんな、滅相もないっ」
むしろ他の子じゃないかと考えてブンブンと首を横に振れば、女の子はニシシと笑う。
「ご謙遜を~。話通り、かわゆいじゃないのさ」
茶化すように話すと、彼女はハッと何かに気づいたように背筋を正した。
「自己紹介してなかった! あたしは梢。早乙女梢(さおとめ こずえ)って言うの。よろしくね」
明るい笑顔を浮かべ、彼女……梢さんは私に右手を差し出した。
だから、私も右手を差し出して、握手を交わす。
「私は佐倉小春。よろしくです」
「小春ちゃんか~。名前まで可愛いんだね~。ちなみに年は?」
「16歳。高1です」
「なんだ、一緒だね! 同じ年ってなんか嬉しいなぁ。あ、あたしの事は適当に梢とかこずちんとか呼んでくれていいからね。あと、もちろんタメ口で」
「う、うん。じゃあ、梢ちゃんって呼ぶね」
半ば押され気味に答えると、梢ちゃんは満足気に頷いた。