桜涙 ~キミとの約束~
✿占い
病室に戻ってしばらく。
ベッドに腰掛け携帯をいじっていると……
──コンコン。
扉をノックする音が、遠慮がちに室内に響いた。
この位置からだと扉が見えず、誰がノックしたのかはわからない。
携帯の右上に表示されてる時計を見れば、時刻はまだ11時。
両親が来るのには早いなと思いながらも「はい」と声を出すと、カラカラと扉が開く音がする。
毎日、清掃員のおじさんが掃除してくれてる綺麗な床を歩く誰かの靴音。
ひょっこりと顔を出したのは……
「奏ちゃん」
メガネをかけた、幼なじみだった。
もしかしてリクも一緒なのかと思ったけど、どうやら一人らしく。
「体調はどうかな?」
「うん、今は大丈夫」
笑みを浮かべてはみたものの、リクがいない事にちょっとだけ……落胆してしまう。