桜涙 ~キミとの約束~
リクとは倒れた日以来会ってない。
心配してくれるメールは何通かもらったけど、奏ちゃんのように、こんな風にお見舞いには来てくれてなかった。
当然、なのかな。
だってリクは、私は奏ちゃんといるのがいいんだって……そう、言ってたし。
奏ちゃんは、ギッという音を立てパイプ椅子に腰掛けると微笑んだ。
「これ、暇だろうと思って買ってきたんだ」
そう言いながら、奏ちゃんがビニール袋から取り出したのは、私が毎月購入しているファッション雑誌だった。
「あっ、これ、最新号だ」
「いつも買ってただろ?」
「うん、ありがとう奏ちゃん」
奏ちゃんの心遣いが嬉しくて笑顔でお礼を述べる。
すると、奏ちゃんは目尻を下げて微笑み「どういたしまして」と声にしてから、申し訳なさそうに声のトーンを落とす。
「……でも、大切な小春にこんな事しか出来ない自分が歯がゆいよ。何か出来る事があったら遠慮なく言ってくれてかまわないから」
「うん……ありがと。でも、大丈夫だよ」