桜涙 ~キミとの約束~
「頼むから、僕を拒絶しないでくれ。僕を、ひとりにしないで。僕に、居場所をくれよ……」
「奏、ちゃん?」
俯いた奏ちゃんに手を伸ばして。
だけど、その手は彼に届くことはなかった。
奏ちゃんが、俯いたまま立ち上がる。
「今日は帰るよ」
「……うん」
まるで暗闇の中でひとり震えているような声で言葉を紡いだ奏ちゃん。
奏ちゃんは、何に怯えてるの?
聞きたくても聞けず、私はただ、悲しみを背負ったように肩を落とした奏ちゃんを、見送るだけだった。