桜涙 ~キミとの約束~
お父さんとお母さんはショックを受けたようで、突然死の可能性にしばらく言葉を発することが出来なかったようだった。
そんな2人の様子を見たのは初めてで。
【死】というどこか現実味のない言葉を受け止めきれずにいた私は、病室に戻った時に2人に言った。
『ほら、人っていつ死ぬかなんてわからないでしょ? 今日、この瞬間にも事故で亡くなった人だっているかもなんだし』
病気なら、良くなれば心配もなくなる。
だから頑張って治すから心配しないで大丈夫。
そんな風に話せば、お父さんもお母さんも、少しだけ微笑んでくれた。
でも……本当は、話しながらどんどん不安になってた。
この瞬間に、死を迎えてしまう人がいる。
それが今日、自分にもやってくるかもしれない。
もしかしたら、明日は来ないのかもしれないと考えて……
そこで初めて、【死】というものがとても怖く感じた。