桜涙 ~キミとの約束~
「待たせてすまない!」
少し息を切らせた奏ちゃんが、私たちの前に立った。
奏ちゃんは、走ったせいでずれてしまった黒縁のメガネをくいっと中指で持ち上げて位置を直す。
メガネの少し上にある眉毛が申し訳ないといわんばかりにハの字になっていて。
私は笑いながら奏ちゃんの眉間に右手の人差し指を押し当ててグリグリとマッサージをした。
「大丈夫。そんなに待ってないし」
小さな事も気にしてしまう性分の奏ちゃんを安心させるように言うと、隣にしゃがみこんでたリクが立ち上がりながら「小春は奏チャンに甘いよね」と呆れたように言った。
「そうかな?」
そんなつもりはなかったんだけど、リクにはそう見えるんだろうか。