桜涙 ~キミとの約束~
「授業でも習ったけど、心臓には四つの部屋があるでしょ?」
「あー…そうだっけ?」
「そうなの。それでね、問題があるのは左心室っていうところで、血液を送り出すポンプの役割をしてる部分なんだって」
通常なら、規則正しく動いてるポンプ。
その能力が弱くなってしまうのが、拡張型心筋症という病気なのだと、今日、先生が教えてくれたように私もリクに説明した。
「弱くなる原因は、左心室が少しずつ大きくなって、心臓の壁が薄くなっちゃうからなんだって」
弾力をなくせばポンプの力は弱くなる。
そうして、全身に血液を送ることがうまくできなくなる。
「その病気は、治るの?」
リクが遠慮がちに問いかけてきて、私は首を横に振った。
「でも、薬が効けばかなり良くなる人もたくさんいるんだって」
薬が効かなくても、ペースメーカーを植え込む手術をすれば、良くなる人もいる。
そう話すと、リクの表情が少しだけ明るくなった。
「だったら小春もきっと大丈夫だ」
「うん……先生も、まずは薬で頑張ってみようって言ってた。でもね」
私は、失神してしまった。
不整脈が出たからだ。