桜涙 ~キミとの約束~
✿新事実
優しい日差しの下、風に吹かれて薄紅の花びらがひらりひらりと舞い散る。
ああ、久し振りに見たような気がすると、夢を見ている私は思っていた。
「わたし、こはる。あなたはどこのおうちのこ?」
返ってきた、小さな声。
「 」
やはり、今日もよく聞き取れない。
けれど。
「どうして?」
幼い私には聞こえているらしく、首を傾げた。
すると、いつもは聞こえなかった言葉が、今日はハッキリと聞こえた。
「ぼくのお母さんが、いなくなっちゃったから」
「迷子になっちゃったの?」
少年はうずくまったままの首を横に振り、涙混じりの声で告げる。