桜涙 ~キミとの約束~
「お前、奏ちゃんとこには行った?」
「ううん。これから突撃予定」
「あー、お袋の事があったから優先してくれたのか」
「違うよ。ずっとリクに会いたかったから──」
言いかけてハッとする。
なんか、ちょっと恥ずかしい事口走っちゃってるんじゃないかって。
だって、私の前に立つリクもちょっとビックリしてるし。
「や、あの。ほら、会ってなかったし」
私は焦り、言い訳がましく説明を試みた。
ああ、なんだか、太陽の熱とは明らかに違う体温の上昇を感じる。
驚いた表情で私の様子を見ていたリク。
やがてその表情が、嬉しそうなものへと変わって。
「なぁ、体調が大丈夫ならさ、今年も夏祭りに行こうか」
それは、毎年三人で繰り出すのが恒例となった、夏祭りへの誘いだった。