桜涙 ~キミとの約束~
✿夏祭り
彼が狙うのは、中でも一番難易度の高いものだ。
精神を研ぎ澄ませ、銃を構える姿はまるで闇夜に紛れる凄腕のスナイパー。
彼の目に映るのは獲物だけ。
銃にこめられた弾は、一発のみ。
外せば全てが終わる。
──ゴクリ。
私はつばを飲み込んで、やがて訪れるであろう一瞬を待っていた。
もしも仕留められなかったら。
そんな不安が過ぎった。
けれど……彼なら、きっと──
祈るように両手を合わせた刹那。
彼の指が、引き金を引いた。
銃口から勢い良く飛び出した銃弾が獲物の腹部を直撃して。
グラリ……
その体が揺れると……
崩れ落ちるように、赤いシーツの上に横たわった。