桜涙 ~キミとの約束~
私は受け取った人形をギュッと抱きしめる。
「ありがとうリク。大切にするね」
「どういたしまして。よっし、じゃあ次は腹ごしらえしよう」
「うん」
頷くと、リクは出店を背に歩き出した。
私は彼の背を追うように、人波みの中へと踏み出す。
頭上には、夜空を彩るように連なり灯る提灯。
道の脇にはたくさんの夜店が並んでいる。
嬉しそうに屋台をまわる子供たち。
浴衣を着た女の子たち。
子供も、大人も、お年寄りも。
みんな生き生きとした顔でお祭りを楽しんでいる。
毎年行われている町内の夏祭りは今年も大盛況のようだ。
私の前を歩いていたリクが振り返る。
「奏チャンから連絡は?」
「まだ来てないよ」
答えて、私は先日の事を思い出した。