桜涙 ~キミとの約束~
リクがどんな気持ちで何を考えて話しているのかはわからないけど、私的には、手を繋いだこの状況から変に意識してしまう。
だからリクの顔をまともに見れずにいたら……
「今頃奏チャン、小春のことが心配で手伝い失敗してるかもなー」
ハハハと笑ってから、私を見た。
「でも、たまにはいいよな。オレが小春の事、独占する時間があっても」
茶化すように笑うリク。
「いっそ、愛の逃避行でもする?」
提案した彼の声は冗談めかしたもの。
けれど……
リクの瞳には、それだけじゃない何かが宿っているように見えて。
ドギマギしながら答えあぐねていると、リクはまたいつものように「なんてね」と言って誤魔化すように微笑んだ。
「さーて、何食べようか?」
リクの視線が私から外れて連なる夜店へと移る。
まるで、自分がした会話から逃げるように。
私の心に、期待にも似た戸惑いを残したまま──‥